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2009年04月26日

尊厳死宣言公正証書

 「尊厳死」とは、一般に「回復の見込みのない末期状態の患者に対して、生命維持治療を差し控え又は中止し、人間としての尊厳を保たせつつ、死を迎えさせることをいう。」と解されています。
「尊厳死宣言公正証書」とは、『嘱託人(宣言者)が自らの考えで尊厳死を望む、すなわち延命措置を差し控え、中止する旨等の宣言をし、公証人がこれを聴取する事実実験をしてその結果を公正証書にしたもの』です。(「事実実験」とは、裁判所の検証に似たもので、その結果を記載した「事実実験公正証書」は、裁判所が作成する「検証調書」に似たものであり、証拠を保全する機能を有し、権利に関係のある多種多様な事実を対象とします。)

 尊厳死宣言がある場合には、自己決定権に基づく患者の指示が尊重されるべきものであることは当然としても、医療現場ではそれに必ず従わなければならないとまでは未だ考えられていません。また治療義務がない過剰な延命治療に当たるか否かは医学的判断によらざるを得ない面があることからすると、尊厳死宣言公正証書を作成した場合にも、必ず尊厳死が実現するとは限りません。
 「延命治療の中止」は、すなわち「人の死を招来する行為」ですから、厳密に言えば「嘱託殺人罪」の構成要件に該当します。しかし、本人の真摯な意思が明白なときに限り、その違法性が阻却されると解されています。そのため、安易な尊厳死の執行は刑事責任追及の対象になる余地もありますので、医師としては慎重にならざるを得ません。
 もっとも、尊厳死の普及を目的している日本尊厳死協会の機関誌「リビング・ウィル」のアンケート結果によれば、同協会が登録・保管している「尊厳死の宣言書」を医師に示したことによる医師の尊厳死許容率は、平成15年は95.9パーセント、平成16年は95.8パーセントに及んでおり、このことからすると、医療現場でも、大勢としては、尊厳死を容認していることが窺えます。
 もし、尊厳死を希望されるのであれば、医師が受け入れやすい「公正証書」での尊厳死宣言書を作成しておくことがよいでしょう。

【文例】

平成21年123号

尊厳死宣言公正証書
本公証人は、尊厳死宣言者 二本松 康の嘱託により、平成21年6月6日、その陳述内容が嘱託人の真意であることを確認の上、宣言に関する陳述を録取し、この証書を作成する。

第1条 私、二本松 康は、私が将来病気に罹り、それが不治であり、かつ、死期が迫っている場合に備えて、私の親族及び私の医療に携わる方々に対して以下の要望を宣言します。
1 私の疾病が、現在の医学では不治の状態に陥り、かつ、既に死期が迫っており、延命措置が単に死期を人為的に引き延ばすだけであると、担当医を含む2名以上の医師の客観的・医学的知見に基づき診断された場合には、苦痛を伴う手術や延命のみを目的とする処置は一切行わないでください。
2 しかし、私の苦痛を和らげる処置は最大限実施してください。そしてそのために、例えば麻薬などの副作用により死亡時期が早まったとしても構いません。
3 近時の医療技術の高度化、専門化に伴い、医療費が高額化していることに照らし、多額の財産を有していない私としては、経済的観点からも不必要な延命措置は望みません。私の親族や縁者及び現在の住居である施設の関係者の方々に経済的な負担をかけたくないからです。

第2条 前条記載の症状が発生したときは、医師も親族も私の自己決定権を最大限に尊重され、私が人間として尊厳を保った安らかな死を迎えることができるよう御配慮くださるようお願いします。

第3条 私には子もなく、また妻も既に死亡しているため、この宣言書の保管および執行を下記の者に委託します。私に第1条記載の症状が発生した時は、下記執行者と担当医師との合意の上、上記の私の意思が最大限に尊重されることを希望します。また、執行者に対して、本宣言書の保管及び執行の報酬として、本宣言書執行時に私の財産から金50,000円を支払います。

保管者・執行者
(住  所)   横浜市西区平沼1丁目19番18号
(氏  名)   松 本 康 二
(生年月日)   昭和○○年3月8日
以上

第4条 私のこの宣言による要望を忠実に果して下さる方々に深く感謝申し上げます。そして、その方々が私の要望に従ってされた行為の一切の責任は、私自身にあります。警察、検察の関係者におかれましては、私の親族および担当医師並びに本宣言書執行者が私の意思に沿った行動を執ったことにより、これら方々に対する犯罪捜査や訴追の対象とすることのないよう特にお願いします。

第5条 この宣言は、私の精神が健全な状態にあるときにしたものであります。したがって、私の精神が健全な状態にあるときに私自身が撤回しない限り、その効力を持続するものであることを明らかにしておきます。

以上のとおり録取して嘱託人に読み聞かせたところ、誤りない旨承認し、次に
署名押印する。
以上

(宣言者) 二本松 康   印

本旨外要件
(中略)
公証人  公 証 太 郎 職印
 

posted by souzokushien at 18:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 尊厳死宣言書
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